まえおき
お笑い成人向けです。
飯Pカカベジです。カカベジはnot18禁。


two on two 2



ピッコロは宿泊名簿やら椅子の残骸やらが散乱した廊下を飛んでいた。ただでさえ荒廃しはじめていた建物が、逆さまになっているからだろう、平衡感覚と距離感がおかしい。それでも脳内で修正を掛けながら、ピッコロは一目散に入り口、すなわち身の安全が保障される外界へと向かっていた。
どう考えても、これまでのラップ音やらポルターガイストは、先ほど窓の下に浮かんでいた人物が片棒を担いでいる。その人物とは、まさしくピッコロが嵌めようとしていた青年の姿であった。そう、ということは
何もかもバレているということだ。
ピッコロは車ならばドリフトを掛けている勢いで角を直角に曲がりながら、認識を新たにする。倒れ掛かってくるドアを殴り飛ばし、枯れ切った観葉植物を気で消滅させ、臍を噛む。
あれは、全てを聞いていた上で、周囲に障害物のない、やりたい放題の海辺に戦場を移動させたのだ。
彼だか彼らだかは不明だが、孫のファミリーネームを持つ者が考えていることは、火を見るよりも明らかである。
つまり、
「返り討ちの返り討ちですよ、ピッコロさん」
ゴガアッ、と破壊音を立て、ピッコロの目前の壁に、巨大な覗き穴が開いた。内部は部屋の一室のようだった。奥にある丸く赤いベッドに腰掛けた悟飯が、片手を上げる。何故か山吹色の胴衣を身に纏った姿は、ブウと決死の対戦をしようとした際、流星のごとく現れた時のことを彷彿とさせた。気の量は、いつもの悟飯に違いないのだけれど。
「こんにちは、いや、陽が落ちたからこんばんはですね」
「ご、悟飯、これはだな」
「いやだな、怒ってなんていませんよ。ピッコロさんがヤりたいと思ってくれたなんて、いろいろと手間が省けました。というか、修行僧みたいに滝に打たれたり、布団の中で一生懸命自家発電したり・・・あはは、遠慮しないでも良かったんだなあ、って」
カツ、カツ、カツ。規則正しい歩調で天井を悟飯が踏む。膝から下が残っている壁が邪魔だったのか、無造作な前蹴りで破壊すると、廊下へと出た。ピッコロは懐を探ると、三つの閃光弾を確かめた。入り口自体は近いのだ。悟飯を通り過ごせば、自動ドアはすぐそこだ。掘った穴は、と確認すると、今は頭上にある床にきちんと穴は開いていた。悟飯は気付いていないだろう。
1.閃光弾を投げる
2.入り口から逃げる(悟飯は穴から逃げたと思い込み、館内を探す)
3.海の中に気を消して身を隠す
覚悟を決めたピッコロは、予定通りこの三ステップでいくぞ、いつか弁明はする、と心中で苦味を込めて謝罪をしながら、口でピンを抜き、弾を放り、背を向けた。腕で目を覆ったところで、白い閃光は瞼を焼く。
夏の太陽を直視した何倍もの眩さだった。明らかに限度を超えている。
「す、少し数が多かったか・・・!?」
振り向けば、悟飯は蹲っていた。網膜が焼けていたらどうしよう、と途端にピッコロが冷静さを失う。地球人は自力で再生が出来ないのだ。デンデに頼めばいいことを思い出したのは、十秒後のことである。意を決してピッコロは悟飯の横をすり抜けると、自動ドアに長い指をねじ込んだ。左右に開こうとしたものの、逆さに落とされた衝撃で歪んだのか開かない。破壊すべきか逡巡するピッコロの耳に、悟飯の戸惑う声が、か細く触れた。
「あ、れ、見え、ない、ピッコロさん・・・ピッコロさん!?どこですか!?」
ずく、と。ピッコロの心臓が、鋭く痛んだ。
「悟・・・飯ッ!」
足元が抜けるのにも似た恐怖を感じ、ピッコロはかつての弟子の下へと駆け寄る。悟飯の瞳はピッコロの動きを認識していない。見開かれたままの悟飯の目に、ピッコロは言葉にすら出来ない悔恨が圧し掛かるのを全身で感じる。
走馬灯が目の前を駆け抜けていく。黒髪が長かった頃の悟飯。おかっぱの悟飯。髪を切り、ピッコロと同じ装束に身を包んだ悟飯。そして髪を逆立たせた悟飯。どの悟飯をも、ピッコロは大切に思い、見守ってきた。自らの手で傷付けるなど論外も論外、有り得てはならない事態だった。治療が可能だという事実は、既に頭の中から吹っ飛んでいた。
よろめいた悟飯を腕の中に抱き止め、ピッコロはゆっくりと膝を付いた。瞼の上を掌で覆うと、長く伸びた手足を眺め、苦渋を込めて呟く。
「・・・俺はなんということを・・・!」
「あ、ピッコロさん、戻ってきてくれたんですね・・・」
「ああ。俺はここにいる。悟飯、すぐに神殿に連れて行ってやる、少し辛抱してくれ」
「すぐに治ると思います。このままで居てください」
「馬鹿を言うな。そんな訳が」
「ここに来たら抜かずに三発相手をしてくれるんですよね」
悟飯は師の手首をがっしりと掴むと、アイマスクを外した。悟飯の焦点は思い切りピッコロに合っていた。あれ、とピッコロはスローモーションに感じる世界の中で訝しんだ。世界が回り、どうも押し倒されたらしいと知ったのは、悟飯が「もう治りました」と口の端の片方を小さく吊り上げたときのことだった。そういえばブウと戦ったときもこんな笑い方をしていたな、とピッコロは思った。
「あんなスラム街じゃ誰かに迷惑をかけるかと思って、お父さんに建物を持って飛んでもらったんです。僕は中に居ましたよ。ばっちり、聞いていました」
「つまり・・・」
目は治ったのかなどという気の抜けた台詞を噛み砕き飲み込むと、ピッコロは現状把握に勤しんだ。
「・・・森の中で分かれた後、俺を尾け、そのままホテルの中に潜んでいたわけか」
「そりゃ、あんな美味しい話聞かされたら、お父さんはともかく僕は疑いますよ。なんたってピッコロさんの弟子ですからね。ふふ、でも、膝を付かせるのは僕の方が上手かったみたいですね」
悟飯は頭上の床に開いた穴を親指で指した。
「だいたい僕はどうやってピッコロさんを四つん這いにさせるかを日夜考えているんですから、負けるわけがないですけど。あ、それからこの紐のことも聞きました。凄いですね、ふんぎぎぎ・・・っと、こうやってもびくともしませんもん。これを、こうやって」
悟飯は逃げようとじたばたしているピッコロの後ろ手に回した手を、一纏めにして括った。実験でもしているかのような顔でぽん、と結び目を叩く。
「こうすれば、流石のピッコロさんも外せないですよね」
「こんなもの手首を破壊すれば訳など、」
「僕が離れるとでも思ってるんですか?至近距離でピッコロさんの気弾なんか喰らったら、僕壊れちゃうかも」
「うぐ」
ピッコロは思い切り言葉に詰まった。修行以外で悟飯に傷など付けられる訳もないと、既に我が身が証明しているのだ。
悟飯はピッコロの背と膝裏に手を回すと、部屋から転がり出ていたらしい、一人掛けの朱色のソファにピッコロをそっと座らせた。左右に足を開かせ、肘掛の外に脛を落とすと、跪き地球人ならば臍のある辺りにキスをする。
「今日は僕がヤるってことで、ね、体を預けてください、ピッコロさん。元はといえば、ことを動かしたのは貴方です」
だからやめときゃ良かったんだ、とピッコロはがくりと首を仰向かせた。
ベジータの威勢のいい言葉に乗ってしまった己の浅墓さを省み、ピッコロは片目を開いて悟飯を見下ろす。悟飯は山吹色の胴衣を脱いでいるところだった。逞しくなった胸筋を目にし、ピッコロは眩暈がする心持で再び目を閉じた。

その頃ベジータは、頭から悟空に食われかけていた。
「やめろカカロットおおお!今幽霊がその辺りにいるはずなんだぞ!」
「オバケくれえいいじゃねえか。それよか、オラ腹減ってんだよベジータぁ」
「だからって俺を食うな!」
「だっておめえ見ると腹減ってくんだよ。涎が滝・・・じゃねえや、ほしくず?」
「涎を垂らすな、舐めるな齧るな乗っかるな!」
会話が堂々巡りなのはいつものことだ。四の字固めにしておいて、ベジータの額を涎でべとべとにした悟空は、うーんと唸った。
「なんか違ぇんだよなあ。やっぱり下か?悟飯は尻が良いっつってたけどよ」
「カカロット、お前の上に乗るのは俺のはずだ。誰が考えてもそうだろう、違うか!?」
ベジータの理論もどこか間違っているが、悟空にとってあまり理は関係がない。彼はそんなことを考慮に入れないからだ。
「オラに乗りてえのか?ベジータ」
「あ?ああ、そうだ。貴様に組み敷かれるくらいなら舌を噛んで死んだ方がマシだ!」
お前はどこの世界のお嬢様だ、とピッコロが居たなら突っ込みを入れただろうが、不幸なことにこの場には暴走ボケしか要員が存在しなかった。
「なら乗れよベジータ。ほれ」
悟空は胡座を掻くと、ぽんぽんと腿の辺りを叩き、にこにこと笑んだ。
「乗りてえんだろ?」
重ねて問われ、ベジータは口を尖らせる。苛々と戸惑いが混じった表情だった。確かに悟空よりも優位に立ちたい心に間違いはない。けれど、なんかこう、違うような気がするのだ。根本的に。ただ、選択の段で戸惑うのは、ベジータの本意ではない。愚図だと思われるのは、ベジータにとって耐えられない。
「・・・いいだろう!」
居丈高に言うと、ベジータはどんと悟空の腿の上に乗った。悟空はベジータの尻を両手で掴むと、じわ、と気を変化させた。
「じゃ、やっか。ベジータ」
「望むところだ」
ベジータは悟空の前髪を掴むと、無理やりに目線を合わせる。同じ欲情と食欲の混じった瞳は、互いを高揚させてやまない。

悟飯は無防備な師の噛み殺した声を聞く。
後ろ手に縛り上げられた彼の身を守るものはなく、敢えて言うならば口から目から放つことが出来る攻撃くらいだろうが、先程の演技が効いていることは確実だから、悟飯を殺傷できるリアクションがないのは間違いないだろう。だからピッコロは時折痙攣する腿を持ち上げ、悟飯を蹴り飛ばしたりしないのだ。
大きく開脚された脚の間から、涙の浮かぶ顔が見える。睨み付ける眼差しがまた、悟飯の股間に直撃する。
「ほ、んきか、悟飯っ」
「ピッコロさんも僕とのセックスに乗り気だったんでしょう?まあ、一回くらいは弟子に主導権を握らせてください。大丈夫です、イかせまくって見せます!イメージトレーニングの数なら誰にも負けませんから」
ガッツポーズをすると、悟飯は手を合わせ何かに祈った。そして、いっただっきまーす、とピッコロの胴衣の下をするすると脱がす。思わずといった態で脚を合わせるピッコロの泡を食った顔に、ボルテージがマックスになったのか、母音だけを発して口付けた。
「・・・ね、いいでしょ?ピッコロさんっ」
「・・・」
自業自得。ピッコロは目の前の息を上げた弟子の顔にそんな文字を幻視しながら、小さく「壊すなよ」と吐き捨てた。
「そんなおっきくないですって僕、もしかしたら初めてだと痛いかもしれませんけど」
「でかいな!」
ピッコロは思わず突っ込んだ。股間で臨戦態勢になっているものは、ご立派様とどこかで崇められても良さそうなサイズだった。遺伝かもしれない。ちらりとベジータの生え際がピッコロの頭に浮かんで、すぐに消えた。あちらを構っている暇はない。
毛も生えていなかった頃の悟飯の下腹を思い出し、ピッコロは思わず現実逃避をはかる。荒野で修行を積んでいた頃は、あれはただの排泄器官だと思っていた。生殖器だと知ったのは、白いものを顔にぶっ掛けられてからだ。
あの衝撃は、個人的にフリーザの第三形態を見てしまった時と同じくらいだと、ピッコロは思っている。
「ああ、ピッコロさんの中で昇天出来るなんて、ベジータさんありがとう。あ、もういっこいいですかピッコロさん。中出ししてもオッケーですか?お腹壊したりしませんか?」
「何だなかだしとは」
「でも壊すも何もピッコロさん下すものないしなあ」
大真面目に師の下事情に思いを巡らす悟飯は、無意識の仕草でくっついていた脚を開かせている。御開帳した脚の間に唇を寄せた。上から聞こえる抗議など馬耳東風で、熱心に解すことに執心する。息を引き攣らせながら、ピッコロが声を荒らげた。
「だから、何だとっ、聞いているんだ、悟飯!」
「ほら、僕の白いヨーグルトをピッコロさんの中にそのまま出すことですよ。胸とか顔にぶっ掛けてもいいんですけど」
下の違和感に耐えつつ、ピッコロは考えた。あの、布で拭いたくらいでは落ちない、臭いのするアレ。顔やら体やらに付くよりは、見えない内部に出された方がなんぼかマシではないだろうか、と。彼の認識は間違いすぎているほど間違っているのだが「中で頼む」との仰せに狂喜乱舞する悟飯に、その間違いを正してやる義理はなかった。
内部の熱が伝染したように熱い二本の指を口に含んだ悟飯は、名残惜しげに口付けた後、大きく深呼吸をする。生真面目な顔をした青年の表情を直視できず、ピッコロは目線を逸らした。熱くなった下肢に悟飯が触れ、両足を抱く。立ったままで悟飯は言った。
「では、早速頂きます」
そして、腰を進める。じわじわと割り開く動きは、残酷なほどに緩慢としていた。互いに息を上がらせ、時に苦痛に呻きながら、半分ほど収めたところでピッコロが呟いた。既に脂汗が頬を伝っている。
「く・・・これは、いつもこんなに痛いのか・・・っ」
「す、みません、受け入れてくれる方が、どうしても辛く・・・僕が、下手なのかも、しれないですけど」
「いや、いい。お前が、痛むよりは、よほど」
いい。
そんな慈悲深い台詞を至近距離で聞いた悟飯が、猛らないはずもなく。
無理やりに近い動きでピッコロの奥近くにまで侵入し終わった時には、二人の心情は言葉にしがたい熱と連帯感に似た感情で一杯になっていた。悟飯は唇を目元に押し付け、零れた涙を啜る。ピッコロは大きく息を吐き出すと、
「もう二度としたくないな・・・」
などとしみじみと感想を述べた後、
「ただ、お前の体の一部が、俺の中にあるってのは、悪い気分じゃない」
と付け加えた。加えられた言葉は悟飯には届かず、ふえ、と悟飯は妙な声を漏らした。
「ピ、ピッコロさん、もうちょっとで気持ちよくなりますから、もう二度としたくないなんてそんなこと、言わないでくださいっ・・・」
泣きそうになっている。おいどうした、と心配し、ピッコロは悟飯の白い頬に手を当てようとした。手を戒められていて、叶わなかったけれども。
「悟飯、縄を解け。お前に触れられん・・・なんで泣くんだ」
「だって、折角ひとつになれたのに、ピッコロさんがぁ・・・」
「馬鹿、おい、泣くなと」
腹の中の圧迫感がどことなくなくなっていくのを感じながら、ピッコロは焦る。そして仕方なく腹筋に力を込め、身を起こし、悟飯の頬に唇を触れさせてやった。
「っ、ピッコロさん・・・?」
「嫌だとは言ってないだろう。俺はどうでもいい。お前がやりたいようにやれ。こうなったら、どこまでも付き合ってやる」
「ほんと、ですか?」
「本当だ」
「そうですか!」
シュインシュインシュイン。
聞き慣れた超化サイヤ人から発生する音が、ピッコロの優秀な耳に触れる。金の髪を逆立てた悟飯は、興奮した面持ちだった。恐らく戦闘のスイッチがどこかで入ってしまったのだろう。穏やかな心はどこへ行った、とピッコロは思う。肯定されたことで穏やかになったのかもしれない、などという考えには至りたくもない。
「じゃあ、思い切り、喘がせてあげます。三発目に、抜かないでってピッコロさんが思わず言っちゃうくらい」
「お前、出すってあの白いのか。三回か。おい、三回も出したら」
「突っ込むときに凄い音がしそうですね。あ、掻き出したら駄目ですからね」
ずる、と悟飯が再び力を持った性器を引き抜く。ぎゅうっと目を閉じた師の瞼が、思い切り突き入れたことによって大きく見開かれる。
「あ、」
「体力だけはありますから、どんなに腰を使っても壊れないですよ、僕。たっぷり注いであげます。僕のザーメンでお腹一杯になってください」
「ちょ、悟飯、奥、あた、」
「自分の奥、知ってるんですねピッコロさんも。これ以上やっぱり行けないかな」
「ひ・・・っ」
悟飯が脚と共に腰に手を回し、接合を深める。小刻みに最奥を突く動きに、ピッコロは首を振って嫌がった。小さく喘ぎながらの可愛らしい抵抗に、悟飯はますます楽しげに、ごつごつと奥を突いた。性感帯になっていたらしいそこを執拗に刺激したことで、ピッコロは目元に血の色と涙を滲ませる。呼吸のコントロールが効かなくなったのを見て取った悟飯は、だいすきです、ピッコロさん、と唇と耳朶を擦り合わせながら囁く。
「悟・・・っ・・・!」
効果は覿面だったらしい、全身を硬直させ、内部を痙攣させたピッコロの、搾り取るような動きに悟飯は耐えた。そして、荒い息を吐き出す唇に噛み付く。
「夢みたいなイき方でした・・・ああ、僕、出来るだけ出さないように、頑張りますから」
ピッコロは快楽に昇らせていた全身の血が、さあっと引いていくのを感じたのだという。
一体悟飯が三回放出するまでに、何度ピッコロがイかされたのか。それは二人だけが知っているレコードだった。

 


数日後、ひぐらしが涼しげに鳴く時分。
ピッコロはベジータが壷を思い切り海へとぶん投げているところに遭遇した。
水平線に半分ほど頭を突っ込んだ夕日は、以前ほど禍々しくはない。さんざめく大海を朱に染め上げているのは、ただの夕刻の太陽であり、それ以上でもそれ以下でもない。
壷はやめたのか、とベジータにそっとピッコロは問いかけた。
逆さまになったラブホテルがあった岬に体育座りをしたベジータは、ひとまわり小さくなった体と声色で、あれは効かん、と言った。そりゃああれは悟飯が百円均一で買ってきた奴だからな、とピッコロは思ったが、あまりのベジータの憔悴振りに言葉を飲み込んだ。
「大丈夫か」
「尻が痛い」
「・・・そうか・・・」
何も言わずに、ピッコロは踵を返した。もう、二人が共同戦線を張ることはないだろう。話題の共有は、しなくてもいいだろうと思われた。
不幸の度合いで競い合っても仕方がない。
一角獣の角じみた岬から去ると、堤防に悟飯が立っていた。既に、ラブホテルをこんなところまで運んできた元凶、孫親子には家屋を元に戻させている。ぐちゃぐちゃになった内部の掃除もさせた。住んでいた家のない人々もそのうち帰ってくるだろう。今日ここまでピッコロと悟飯+αが来たのは、ベジータの様子が気になったピッコロに、悟飯が同伴を申し出たからだ。
ピッコロさんの傍を離れたくありません。うっとりとピッコロの首筋にのの字を描きながら、悟飯は言った。泣き出したいのを抑えながら、最後の矜持でピッコロはそれを許した。拒否すれば泣きながら怒るかも知れない。そうなったらもう、手に負えないのだ。
「おーいベジーター!」
テトラポッドで胡坐をかいていた悟空が、すっくと立ち上がって手を振る。無邪気な顔だ。ピッコロは黙っていろと制止しかけたが、悟空は遠慮会釈なしに叫んだ。
「お化けはもういーんかー!?」
「そうですよベジータさん、ちゃんと対策練っておかないとー、また出ちゃいますよー!もう出てますけど、ここに」
「ああ、べジータ脅かしたの、おめえだったんか悟飯」
黒い陰になっていたベジータが突如、金色に光った。
ざっぱーん、と穏やかだった波が小さなベジータを覆うように跳ね上がる。驟雨のごとく降り注ぐ海水を全身に受けたピッコロは、ゆっくりと片手で顔を覆った。
黄昏の荘厳な気配の中、二個の光球が激しくぶつかり合っては、気を撒き散らしている。
隣では悟飯がそっと寄り添い、綺麗な夕暮れですねなどと夢見がちなことを呟いている。
どうしよう。とピッコロは考えた。
ひたすら、今夜ベッドに引っ張り込まれない方策を、良く回る頭をフル回転させて、彼は考えていた。
まず、孫家のハンターの血をどうやって納めるかが問題だ。
宇宙の始まりを解き明かすよりも難しそうな命題を、哲学者じみた表情でピッコロは解き明かそうと頑張っていた。
ベジータのように抵抗する方が、ある意味正解かもしれない。事実、悟飯の掌はピッコロのターバンに掛かっている。
はらりと落ちた布の端を白い手が引くと、ピッコロの左目から高い鼻梁、耳朶の下が同じ色に犯された。
残された瞳を、悟飯はゆっくりと大きくなった掌で覆う。



blackout

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リクエストは
飯→(←)P&カカ→べジorカカ&べジで自分勝手で素で唯我独尊をいく孫親子に振り回されるベジータとピッコロが仕返ししようと企むも、逆にとんでもない目に合わされる
でした!楽しかったです!

唯我独尊っぷりは飯カカベジ三名に遺憾なく発揮されました。サイヤ人は基本的に常に全力疾走だと思います。ピッコロさんはマラソンで放り投げられる空きカップとかを拾い上げてまた走る人だと思います。
あとベジータをとてもテンション高くして申し訳ないです。個人的に間違った方向にテンションが高くてふと見たらなんだか怯えていたりする、落ち着いていない頃の王子が大好きです。おとうさんになった王子も好きですけれど、ピッコロさんと噛みあわせるなら前者王子がいいと思います。
悟空は最強で。悟飯も対ピッコロさんなら文句なしに最強で。
それでもベジータとピッコロさんは向かっていかざるを得ないと思います。だって永遠のライバルでお師匠様だもの。
機会があったらまた書きたい四人でした。
では、リクエストどうもありがとうございました!