PS2ソフト、DBZスパーキング!OPより。
フリーザVS超べジータ、セルVS青年悟飯+ピッコロ、悪ブウVS悟空で戦ってます。
雄同士で子供がどうとか言っていますのでご注意ください







どうしてこうなってしまったのか。サイヤ人の王子を自負し、ゆくゆくは声を大にして貴種を主張することを望むべジータは、孫悟空の青い靴先をぼやけた目で睨み付けていた。口許が苦い砂を噛む。
仇敵フリーザの消滅は、望みとは異なる形でいとも呆気なく実現した。悪魔じみた力を、爆風と共に消し去った男は、ベジータに気付くと嬉しげに笑った。理由も何も考えることなく、視線が擦り合わされただけで闘争本能が燃え上がるのをベジータは知る。そして、数度打ち合っただけで倒された後も、燃え上がった欲望は、細かい傷の走る腹をじりじりと焼いている。

We are!

念願のスーパーサイヤ人となったベジータは、長い間抹消対象であったフリーザに反旗を翻した。
ナメック星の面白いものの何一つない風景が、面白いように千切れ飛ぶ。地球からのこのことやってきた塵共が何か騒いでいたが、知るものか。荒々しい力と沸き立つ感情のままに、数分前までは畏怖の対象であった軍の長に拳を叩きつけようとした瞬間。
空間にヒビが入り、砕けた。
暴力的な気が次元の異なる世界から吹き込んでくる。身を庇うのがやっとのベジータの視界の中で、三つの戦場がひとつに混ぜ合わされた。
それは、ほんとうに光が眼前を駆け抜ける程度の時間に過ぎなかった。孫悟空が空間を割っては掻き混ぜ、見知らぬ青年とナメック星人をなぎ倒し、ピンクの化け物と興奮することこの上ない戦闘を繰り広げた時間は、時を線としたならば、針の先ほどの点に過ぎなかっただろう。
砂塵の舞い上がる地に叩きつけられたべジータの頭は、忙しなくこれまでの戦況を反芻していた。
まず、世界が重なったことにより、信じがたいことにフリーザが粉微塵に粉砕された。次に緑色の親玉と小さい子分たちが、爆発に巻き込まれて消えた。ナメック星人が青年に覆いかぶさるようにして閃光から庇っていたから、地球人の外見をした青年は守られたのだろう。
孫悟空は見知らぬ、地球ほどの重量のある気を纏っていた。
軽々と力を振りかざし、ピンクの敵を押して押して押しまくった。震えが走るほどの次元の異なる戦いだった。振り下ろされる腕、叩きつけられる脛のひとつひとつの動作が、容易くべジータの肉を裂き、骨を砕くだろうことが容易に予想できた。
歓喜が走った。
勝利に酔わず、息を弾ませながらも違うことなくべジータを青い瞳に捉えた、下級の同族の姿に。
「カカロット・・・!」
万感を込め、ベジータは地を抉る勢いで前進を開始した。

で。
「ベジータおめぇ、よっわくねぇか?いつのベジータだ?」
猫の仔でも撫でるように、悟空の掌がベジータの黒く戻った髪を押しつぶす。屈辱にぶるぶると指先は震えるが、肘や肩は全く言うことを聞かないのだった。
「カカロット・・・!」
憤怒のままに怒鳴ろうとして、ベジータは大きく開いた口を一度閉じた。
「・・・貴様今、何と言った?いつの、だと?!」
怒りに困惑を滲ませるベジータに、悟空は頷いた。
「おう。今ブウと戦ってるんとはちげえし、人造人間の時でもねえ。ナメック星から帰った辺りか?おめえあん時スーパーサイヤ人になれたっけか」
「いや、俺は今ナメックせ」
「オラ分かったぞ!地球に攻めて来たくれえのおめえだな!」
「違う!俺の話を無視するなぁ!」
「まあまあ。そう大した問題じゃないでしょう」
割って入ったのは、地球人の外見を持つ青年だった。先程の爆発の影響を微塵も見せないのは、この空間で立っている四人目の戦士に庇われたからだろう。彼は、にこり、と全く傷の付いていない顔で笑う。
「分からなくて当然ですよ。このベジータさん、僕よりぜんぜん弱いですもんね。お父さんが見分けられないのも分かります。あれ、でもベジータさんって、僕より強かった時期ありましたっけ?」
深く眉間に溝を刻むのは、険しい双眸を持つ緑の肌の偉丈夫。
「一度、悟空の後にベジータがスーパーサイヤ人になったときくらいか。ほんの一時期だな。弱いなどと、あまり事実を言ってやるなよ。しかし、面白いこともあるものだな。こいつらは違う世界のベジータと、孫ということか。確かに二人は既に亡いはずだからな・・・頭に輪っかもないようだ。信じるほかないようだ」
「二人で戦い始めたときはどうしようかと思いましたよ。あんまり暴れるものだから、うっかり手を出しかけました」
「・・・おい。俺と約束しただろう。平和主義を座右の銘に掲げたからには、誘惑に負けるんじゃない。こいつらの子供のじゃれ合いに正義も悪もないんだからな。お前は正義の味方なんだろう。慎みを持て慎みを。お前と孫とベジータが三つ巴で戦ってみろ、空間が捩れるどころの騒ぎでは済まんぞ。分かっているんだろうな、悟飯」
名を聞いたとたん、ベジータが顔を跳ね上げる。
悟飯だと。
心中で絶叫すると、ベジータはあははと笑う表情の青年を凝視した。確かに、踏み潰せそうなほど小さいはずの悟飯の面影がある。というか、悟空に目や眉がそっくりだ。
その隣で言行について小さくたしなめるナメック星人は、そう、孫悟空の子、当の悟飯が憧憬の眼差しで見詰めていた者だ。確かピッコロとかいう名だったはずだ。その割には異様に強い気を感じる。それから随分と、
「悟飯のデカさも信じられんが・・・貴様にも違和感を感じるな・・・善の気も悪の気も感じんぞ・・・?」
「それは神様と融合したっていう物理的な要因もありますけど、何より紆余曲折を経て僕のP」
「悟飯!」
びりびりと鼓膜が震える。
「いくら貴様でもそれ以上は許さんぞ!」
怒鳴り声だけはデカい奴め。心中で緑色の宇宙人を詰るだけ詰り、ベジータはゆっくりと体を起こした。ふらつきながらも自らの足で地面を踏みしめる。乾いた風が四名の間を吹きぬけた。
「なら、ベジータよお」
子とかつての宿敵のやりとりにも上の空だった悟空が、急に笑顔を蘇らせ問いかける。
「まだおめえは伸びるってことだよな」
「決まっている!貴様などに負けたままでいられるか!」
「そっかそっか。ん?なんだピッコロ。そっちの悟飯はまぁだおめえにべったりか?」
「ええ。そうそう、ハイヤードラゴンっていたでしょう、お父さん」
脈絡がないように聞こえる悟飯の台詞に、悟空は上を向きながら応える。
「あーあのちっちぇえ竜か。おめぇチチにどやされて大変だったなあ。でもあの後鈴の付いた首輪、誕生日に貰ってたろ」
「はい。でもハイヤードラゴンもお嫁さんを貰って、遠い山に引っ越しちゃって。僕は寂しくってしょうがなくて・・・そしたら、身近にすてきな適任者がいたんです」
きらきらした瞳で悟飯が隣の人物を見上げる。引き攣った緑色の面に、全員の視線が集まる。
「いつも僕を守ってくれて、暖めてくれて、一緒に世界を駆け回ってくれて、回復行為もしてくれる、僕だけのひと。なにより、すっごくカワイイんですよ」
「黙」
ピッコロは悟飯を殴って黙らせようと手を上げたが、瞬時にシュピンと背後に回られ直伝の技、魔閃光を叩きつけられた。どんな相手にも気を抜くなと教えた末に、己相手に訓示を実行された師の心中はいかほどのものか。ベジータは柄にもなく陰鬱な気分に陥った。孫家の人間は、普段大らか過ぎるほどに大らかな癖に、時たまベジータよりもサイヤ人らしい言動を見せる。
と、ベジータの前に立った悟空が、すっと手を伸ばした。あまりにも自然だったのでテリトリーに侵入されることを許してしまったベジータは、
「貴様ぁぁっ!よほど殺されたいらしいなっ!」
ギャリック砲を両手に集めたベジータの股間を、さらに強く、悟空が握り締めた。集中できるはずもなく、ベジータはバックステップで距離を取る。
「何のつもりだカカロット!」
「だってよお、おめぇさっきから縮まってそうだったからなあ。オラつまんねえよ」
「ベジータさんは元から背に比例してちっちゃいから、縮まったってそう問題はないですよ、お父さん」
弟子の暴言に、四つ這いになって咳き込んでいたピッコロがとうとう震え始めた。昔は、とか、俺は何か間違えたか、だとか、聞くに堪えない悲痛な呟きが喘ぎと共に零れる。
「・・・それにしたって悟飯、あんまピッコロんこと苛めてやんなよ?そのうち逃げられちまうぞ」
「何言ってるんですか、お父さん。ピッコロさんと僕は今や地球の双璧です。ピッコロさんがディフェンダーで僕がアタッカー。この世界でどこを見渡しても強いクラスで守りのタイプの人なんていませんから、本当に信頼してるんですよ。ピッコロさん頭も良いし、何より僕のアクションを全部理解してくれる。ピッコロさんがいるから、僕は地球を守れるぞ、って思えるんです。さっきセルを仕留められるところまで行ったのだって、ピッコロさんのアシストなしじゃ無理でしたよ」
ごはん、と呟くピッコロの、常は険を帯びた瞳が、微かに潤む。最愛の弟子の変貌振りに諦め半分、後悔半分でいただろうピッコロは、途端にふてぶてしさを取り戻した。すっくと立ち上がると、腕を組み弟子を見下ろす。よく見れば、砂に汚れた胴衣とマントまでが真新しいものに変わっている。
「フン。まだまだおまえが頼りないからだ。それに、サイヤ人の中でタッグ戦の出来る頭を持った者はおまえくらいだろうしな」
「おい貴様」
しゃらりしゃらりと耳障りな音が、ピッコロが動くたびに立っている。気付いたからには気になって仕方がない。ベジータは苛々と音源、ピッコロの手首に嵌った腕輪を指差した。
「群れなければ戦えない屑はどうでもいいがな。その鈴のゴテゴテと付いたもの、どうにかしろ。戦士の付けるものか。居場所をわざわざ知らせるようなもんだろう」
その時のピッコロの表情は見物だった。
見る見るうちに、首から口許、高い鼻梁、額、触覚、頭頂と、紫色に染まっていく。
「・・・よほど死にたいらしいな、ベジータ・・・」
ゴキ、とピッコロが首と手指を鳴らした。
凄まじい気が上り立つ。ベジータは一歩後退した。
「あはは、ベジータさんひみつに触れちゃいましたね。これはね、ピッコロさんが僕のペットだっていう証なんで」
「うおおおおっ、生かしておけるかぁぁっ!爆力魔波ッ!」
激したピッコロの両手から放たれる、エネルギーの波動。殺される。なんで悟飯を攻撃しない。そうか敵わんからか。
これは、まずい。
本能で確信した戦闘民族の王子は、高く高く跳躍しながら無我夢中で叫んだ。
「貴様、俺にカカロットのライバルの位置を奪われたくせに・・・俺様に勝てるとでも思っているのかぁぁっ!」
「な・・・なに?」
戸惑いを露にしたピッコロの片手が、どろりと溶ける。見る間に崩れゆく塊に取りすがった悟飯が、絶叫した。髪は黒いまま、気だけがそっくり別種のものに生まれ変わる。蛇が脱皮するかのように、鮮やかに瞳の色が塗り替えられる。
「まずいぞ、ベジータ」
ワントーン低い声の悟空に言われずとも、分かる。砂だらけの大地が、あまりの力に震えている。吸い上げる大気は、酸素が逃げ出そうとしているかのように息苦しい。天までが黒雲で覆われ始めた。
「くそ、キレるととんでもないってところは、成長しても一緒なのかッ」
「ああ・・・頭まで僕の手の届くところから消しちゃって、ほんとうにどうしてくれるんですか、ベジータさん・・・?」
「う、うるさい、カカロットから主人公の座を奪いきれなかった根性なしに、俺が怯えるかあああっ!」
「あっ」
悟飯が短く叫ぶ。両手を見下ろした彼の体が、薄く揺らぐ。
ふは、とあっけらかんと悟空が笑った。屈託のない太陽のような笑みだった。
「どっかの悟飯よお。どうやらお別れみてぇだな」
「・・・おとう、さん」
「ピッコロはよくおめえの傍にいてくれてるみてえだ。オラ安心したぞ。でぇじょうぶだ。ピッコロはおめえらの世界に戻っただけだ」
「・・・ああ、そうか。そうなんですね」
頷くと、微かに悟飯が微笑んだ。
それは、小さな小さな頃の笑みを髣髴とさせるものだった。
「なら、さよう、なら。違う世界のお父さん。きっとあなたは、ずっとずっと強いままだったんですね。おはなしの主人として、ずっと」
「オラんなてえしたもんじゃねえぞ、悟飯」
「・・・そうだ、いつか地球人の技術で、僕とピッコロさんの跡継ぎを作って見せます。そうしたら、攻守に長けた最強の戦士が出来るでしょう。主人公にはなれないかもしれないですけど。そうやって地球が任せられるまでになったら、「お父さん」のところに行きます」
待っていてください。
悟飯は言葉を残して、ふいと消え去った。彼の足元だった場所には、砂の小さな渦が残っていた。
しみじみと、悟空は頷く。
「悟飯はいい男になったなあ。こっちの悟飯もああいう男に育ってくれたら、チチも文句ねえな」
「そうか?」
心底からの疑問調でベジータが呟くと、能天気な笑顔で悟空は言った。
「そだ、オラとおめえも子供、作ってみっか?」
開いた口が塞がらないとはこういうことだ。
「ふざけるのも・・・」
「すげえ奴できっぞ、ベジータ」
ベジータは詰る言葉も出てこない。
血統の最良さと戦闘のセンスを受け継いだ、最後のサイヤ人の純血種。悟飯のものとは違う至高の戦士が出来るかもしれない。二人は無意識に、同じ想像をしている。それは純粋な興味だった。
「でっかくなってから戦ったら、楽しいだろうなあー。悟飯の子供よりつええぞ、きっと」
「フン。当たり前だ。主人公の成り損ねとライバルの成り損ねの掛け合わせに負けてたまるか」
「あ、でもオラもう行かなきゃなんねえみてえだ」
すう、と悟空の足先も消え始める。青い靴。ベジータはとっさに腕を掴もうとしたが、指は宙を掻く。
「じゃあな、ベジータ。達者でな」
「カカロット!」
「そっちのオラにもよろしく。また会えたら会おう!」
手刀を額の前に持ち上げると、悟空は呆気なく宙に溶けた。
乾いた風がベジータの伸ばされた腕を嬲る。
「・・・チッ」
ゆっくりと自然体に戻ったベジータは、ふと顎を上げた。
沼底のようだと思っていた緑色の空は、今誘いを掛ける酒のようになみなみと湛えられ、芳醇な色を放っている。飛びたい。唐突にベジータは思った。もっと強い敵のもとに。もっと強く。強く。
そうして悟空から、勝利をもぎ取るのだ。
ナメック星に生き残った全ての命が歓声を上げるのを背で聞きながら、ベジータはゆったりと宇宙船に向かい歩き出していた。


END

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ゲーム ドラゴンボールZ スパーキング!(無印)のOPから妄想。
あそこのピッコロさんと青年悟飯のタッグは燃えた燃えた。
横からタックルかますとてもくうきよめない悟空さにも燃えた。
ベジータはvsフリーザ役だったのであのメンバーの中ではどうしても最弱イメージです。ごめんなさい。でも時間軸的にしょうがない。
悟空とベジータが戦うところはブウ戦のMベジと悟空だった気もするんですが気にしない。
しかしピッコロさんの悟飯の盾率はすごいとおもいます。
ゲームはいっしょうけんめい幼年期悟飯ちゃんがピッコロさんに操作方法を教わっていたんですが、
いちおう全部聞いて立派な魔族認定してもらったんですが、
難しいですね。格ゲー。

おぼえがき
いつも守る=劇場版 暖めてくれて=劇場版四作目 回復行為(仙豆)=サイヤ人絶滅のOVAとかVSブロリー初戦とか